多変数函数論和書リスト

作成開始日: 2020/06/28
最終更新日: 2024/04/1

多変数函数論の基礎(岡理論と $L^2$ を主眼とし,$1$ 変数の勉強後にスムーズに入れるレベル)を専門的に解説している和書で一般の販路に乗ったものについて,私が知る限りの範囲内でですがリスト化します.
議事録,セミナリーノートの類や,さらに進んだ内容(例:特異点,値分布,解析空間,代数幾何寄りの複素幾何など)はリスト化しておりません.
下記内容は頻繁に追記していきます.


■辻 正次: 多複素變數函數論, 岩波書店 (1935)(国会図書館
岡潔以前(第Ⅰ論文が1936年)の和書として有名だが入手困難.何年も探し続けてやっと手に入れることができた.序文

■フランチェスコ・セヴェリ 著・弥永 昌吉 訳: 多變數解析凾數論講義, 岩波書店 (1936)(国会図書館
岡潔以前の和書としてこちらも知られているが,本書についての情報はほとんど得られていなかった.ネット上の情報では,岡潔の蔵書一覧に記載があること(岡潔文庫),高瀬先生のブログ記事に若干の解説があること(高瀬先生ブログ)ぐらいしか見つけられなかった.入手は無理かと思っていたが,やっと手に入れることができた(2022/9/17).当書は講義録であるが一般の販路に乗って販売されたものという認識なのでここに記す.巻末には定価140銭とある.序文

■一松 信: 多変数函数論, 共立 現代数学講座 (1956)
共立出版による講座(全12巻,1956~1957年)の第1回配本の2分冊目(左)(講座の詳細)とそれが単行本化されたもの(右).分冊版は某古書店に廉価でよく並んでいるので比較的入手しやすい.単行本版は裸本なら某古書店によく並んでいるがカバー付きのものを手に入れるのは容易ではない.→本日(2020/10/09現在)某古書店にて3,000円で売られているのを確認した.

■一松 信: 多変数解析函数論, 培風館 (1960) (2016年復刻)
古典的多変数函数論を解説したもっとも有名な教科書.歴史解説にも多数のページを割いており興味深い.2016年に復刻版が出てすぐに完売したようだが増刷の様子無し.旧版も復刻版もデザインは同じ.旧版は復刻版が出るまでは入手が大変困難で,入荷があっても1万数千円~2万円はし即売れるという状態であった.復刻版が出てからは裸本なら廉価で入手しやすくなるも,依然として函付きは入手困難→最近(2020/10/09現在)は割と見かけるようになった.
私の学生時代にもっとも読み込んだ本が本書.

■酒井 栄一: 多変数関数論, 共立全書 (1966)


■梶原 壌二: 複素関数論, 森北出版 (1968) (右: 2007年復刻版(POD))


■ラース・ヘルマンダー 著, 笠原 乾吉 訳: 多変数複素解析学入門, 東京図書 (1973)


■倉田 令二朗: 多変数関数論を学ぶ, 数学セミナー連載1977.7月号~1978.5月号 (2015年単行本化)


■中野 茂男: 多変数函数論 ─微分幾何学的アプローチ─, 朝倉書店 (1981)


■樋口 禎一 ほか: 多変数複素解析, 培風館 (1984)
この本も多変数正則函数の基本事項をコンパクトにまとめてあって有用.特に層係数コホモロジーの基本を手っ取り早く勉強できる.途中からは解析空間,特異点論に話が移っていく.この本を挙げるなら樋口禎一・吉永悦男・渡辺公夫「多変数複素解析入門」も挙げておきたいところだが,古典的多変数函数論からはかなり遠い発展形の内容になるのでここには載せていない.

■西野 利雄: 多変数函数論, 東京大学出版会 (1996) (2023年に増補新装版として復刊)


■大沢 健夫: 多変数複素解析, 岩波 現代数学の展開 (1998) (右: 2008年単行本化)
岩波書店による講座(全12巻,1998~2008年)の第2回配本の5分冊目(左)(講座の詳細)とそれが単行本化されたもの(右).

■山口 博史: 複素関数, 朝倉書店 (2003) (右: 2019年復刻)
2変数に絞って岡の上空移行の原理が解説されている.

■安達 謙三: 多変数複素関数論, 開成出版 (2003)


■若林 功: 多変数関数論, 共立出版 (2013)


■野口 潤次郎: 多変数解析関数論 ─学部生へおくる岡の連接定理─, 朝倉書店 (2013)


■大沢 健夫: 多変数関数論の建設, 現代数学社 (2014)
読み物寄り.岡潔の功績を中心に古典から先端までをオーバービューする内容.

■安達 謙三: 多変数複素解析入門, 開成出版 (2016)


■大沢 健夫: 多変数複素解析 増補版, 岩波書店 (2018)


■野口 潤次郎: 多変数解析関数論 (第2版) ─学部生へおくる岡の連接定理─, 朝倉書店 (2019)


■高瀬 正仁: 岡潔 多変数解析関数論の造形, 朝倉書店 (2020)


■安達 謙三: 多変数複素関数論序説, 開成出版 (2021)


■野口 潤次郎: 岡理論新入門: 多変数関数論の基礎, 培風館 (2021)


■相原 義弘, 野口 潤次郎: 複素解析: 一変数・多変数の関数 (2024)



参考

岡理論や $L^2$ の発展形としては以下が挙げられます.難易度は高いです.

■大沢 健夫: 複素解析幾何と $\overline{\partial}$ 方程式, 培風館 (2006)


■H. グラウエルト, R. レンメルト 著・宮嶋 公夫 訳: シュタイン空間論, シュプリンガー (2009)


■辻 元: 複素多様体論講義, サイエンス社 (2012)



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